収入よりも大切だったもの――転職で減給しても諦めなかった理由|意志だけに頼らない人生の選び方

転職に悩む30代子育て世代の男性が、資産形成と家族を支えに新しい道を選ぶ様子 仕事

※本記事は「転職×資産形成」シリーズの第2回
前回の記事はこちら。

年収3分の1!でも、転職してよかったと思えている理由|意志だけに頼らない人生の選び方
転職の不安と向き合いながら資産形成を続け、年収が3分の1に減っても挑戦できた理由と葛藤を綴る。
  • 第1回:年収3分の1!でも、転職してよかったと思えている理由

  • 第2回(今回):転職で減給しても諦めなかった理由

  • 第3回(予定):転職前にやっておいてよかった家計と資産形成のステップ

  • 第4回(予定):複数収入源を意識した働き方とこれからのキャリア戦略

転職して半年で減給。それでも前職に戻らなかった理由

「転職に失敗して年収が下がったら、家族を守れない」
そんな不安から、一歩を踏み出せない人は多いと思う。

実際、私は転職して半年で減給を告げられた。
焦りや情けなさで押しつぶされそうになったが、それでも「前職に戻りたい」とは一度も思わなかった。

今回は、その理由を正直に綴りたい。

想像以上に厳しかった転職の現実

前職は大手企業の管理職。安定した待遇と周囲の評価。
「営業経験もマネジメント経験も活かせるはず」――そう信じて、地方創生に取り組むスタートアップに飛び込んだ。

しかし、現実は甘くなかった。

  • 意思決定は「まず動く」が当たり前。根回しや合意形成に慣れた自分は戸惑った。

  • 「アウトプット」ではなく「アウトカム」が評価される文化。資料や会議ではなく、行動が変化を生むかどうかが問われた。

  • あたりさわりのない調整ではなく、あたりさわり“ある”行動・発言が求められた

やっているつもりでも結果は出ず、営業としての受注も思うように積み上がらない。周りの人達のスピード感についていけなかった。それに伴い、発言も判断も控えめになっていった。

半年後に減給が決まった。

1つの会社しか知らない自分に本当に市場価値はあるのか?を確かめるためのチャレンジでもあったが、見事に自信を打ち砕かれる転職となった。

悔しさと情けなさの中で、私を支えたもの

減給が決まった日は、さすがに堪えた。

情けなさ、悔しさ、焦り。家族のことを考えると、転職は失敗だったのでは…、以前の職場で安定したキャリアを積む方が良かったのでは…。いろんな思いが頭をよぎった。

でも、同時にこうも思った。

「ここで戻ったら、本当に何も変わらないまま終わってしまう」

私を支えていたのは、転職前から整えていた“生活の土台”だった。

  • インデックス投資の積立:2018年からスタート
  • 固定費の見直し:最低限の保険、格安SIM、自炊習慣 など
  • 家計管理アプリでの家計の見える化

その土台があったから、「生活が破綻する」という極端な不安には襲われなかった。
その心理的な安心感が、踏みとどまる力になった。

再起のきっかけ:行動の順番を変えた(質→量へ、受動→能動)

転職後すぐに直面したのは、「何をどう発言して良いかわからない」という壁だった。
提案やものごとをどう解釈するか――どれも深掘りできず、会議やSlackでの発言は極端に少なかった。

特に、「勝手に判断して進める」というスタートアップの文化に馴染めなかった。
前職では根回しと合意形成が必須で、見積もりを出すにも上司や関係部署の承認を得るのが当たり前だった。だが、そのやり方ではスピードについていけなかった。

そんな中、上司から「アウトプットが控えめだ」と指摘を受けた。
さらに、年下の上司がリスクを背負ってチームをリードする姿を目の当たりにし、最初は戸惑っていた「まず動く」という文化に、自分なりに飛び込んでみようと決めた。

そこから取り組んだのは、行動の“順番”を変えることだった。

  • 発言量を増やす:具体的な数こそ置かなかったものの発言の質ではなく数を担保

  • 判断の順番を逆にする:「相談してから動く」ではなく、「まず自分で判断し、根拠を共有する」

  • 主体的に反応する:誰が返すか分からない投稿などにも、自分から積極的に返信する

こうして少しずつ「控えめな自分」から脱却しようと動き始めた。

そんな中チーム全体で取り組む公募案件で、全体リードの役割を担った。採択に向けたストーリー設計や各案件の推進体制づくり、採択率を高めるための外部折衝を担当した。
結果的に自分の担当案件は不採択だったが、チーム全体で複数の採択に成功。
「自分の動きがチーム全体の成果につながった」と実感できた瞬間だった。

この経験を通じて、少しずつ手応えを取り戻していった。

戻らなかったからこそ得られたもの

転職が「成功」だったかどうか――当時の私には答えられなかった。
けれど、減給されても逃げずに向き合い続けた経験は、何にも代えがたい。

「自分で決めて、自分で動いて、自分で立て直した」
その実感こそが、前職に戻らなかった理由だ。

資産形成という土台が支えてくれた

お金の不安がゼロだったわけではない。
でも、転職前から整えていた「見える化された家計」と「仕組み化された積立」が、心理的な安心材料になった。

私にとって投資や家計管理は、「増やす」こと以上に、挑戦できる自分でいるための仕組みだった。
だからこそ、減給という現実に直面しても踏みとどまることができた。

そして今は胸を張って言える。
この転職は私にとって間違いなく「成功」だった。
もしもう一度同じ選択を迫られても、私は迷わず転職を選ぶ。

転職や行動を変えるきっかけになった本

最後に、私が転職や行動変革の中で大きな影響を受けた本を紹介したい。
これらは単なるハウツーではなく、「考え方を変える」きっかけを与えてくれた本だ。

転職の思考法

単なる転職テクニックではなく、キャリアを主体的に築くための考え方や視点を提供してくれる。より良い会社を求めて転職するのではなく、「自分のキャリアを自分で主体的に選び取る・マネジメントする」という考え方をインストールできる良書。

エフェクチュエーション 優れた起業家が実践する「5つの原則」

「エフェクチュエーション」とは、「コゼーション(因果論)」での意思決定ではなく、手持ちの「手段」から何ができるかを考え、行動を起こすことで未来を想像していく意思決定の思考様式。

大企業での意思決定はコゼーションに偏りがち。エフェクチュエーションという思考様式に意識的であることで行動変容につなげられる。

数値化の鬼

ビジネスにおいて成果を出すための「数字の扱い方」について解説した本。数字を「結果」として見るのではなく、結果に至るプロセスを考えるためのツールとして使うことを提案する。

この中に、「確率の罠」に陥った結果として出現する「働かないおじさん」という表現が出てくる。経験を積むことによって陥る「率(質)」の罠に意識せずにハマってしまった状態。「行動量を減らして質を上げようとすること」が「働かないおじさん」への第一歩であり、成果を出し続けるためには、行動量(母数)を常にキープし、その上で確率(率)を上げていくことが重要と教えてくれる。

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